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2020.12.21

SDGsに貢献する水なし印刷とは?水あり印刷との違いやメリットを解説

業種や業態に関係なく、企業の社会的責任のひとつとして環境負荷低減への取り組みが高まるなか、印刷業界で注目されているのが「水なし印刷」です。その名前の通り、水を使用しない印刷手法ですが、そこには地球にやさしいさまざまなメリットがあります。今回のコラムでは、水なし印刷の特徴をはじめ、水あり印刷との違いや採用するメリットなどを詳しくご紹介します。

〈 INDEX 〉
地球にやさしい印刷方法「水なし印刷」とは?
「水あり印刷」とは?
水あり印刷と水なし印刷の違い
水なし印刷のメリット
水なし印刷のデメリット
水なし印刷に関するよくある質問
CCG HONANDOでは環境負荷低減の取り組みとして水なし印刷を採用

地球にやさしい印刷方法「水なし印刷」とは?

水なし印刷は、有機溶剤を含む湿し水を一切使用しない、環境にやさしい画期的な印刷技術です。2019年にはその環境優位性が国に認められ、「グリーン購入法」に明記されました。従来の印刷工程では不可欠だった湿し水が不要であるため、VOC(揮発性有機化合物)の大幅な削減が可能。VOC は、大気汚染物質を含み、健康被害を引き起こす原因となります。さらに、印刷の「版」の現像工程において回収廃液を大幅に削減できる水現像方式になることで、自然環境はもちろん労働環境にも配慮した技術といえます。 また、水なし印刷を導入すると、環境保全に配慮した印刷物の象徴である「バタフライマーク(水なし印刷認証マーク)」を表示することができます。バタフライマークは、アメリカの非営利団体であるWPA(Waterless Printing Association=水なし印刷協会)が開発したもの。環境問題に熱心に取り組みながらクオリティの高い印刷物を製造している水なし印刷の実施会社と、その印刷物に付与されます。

SDGsに貢献する水なし印刷とは?水あり印刷との違いやメリットを解説

「水あり印刷」とは?

一般的な水あり印刷は、印刷工程に湿し水を使用します。親油性のインキと水が反発する性質を利用し、画線部(インキがのる部分)と非画線部(インキがのらない部分)とに分けることで印刷が行なわれます。インキの付いた版から用紙に直接転写するのではなく、ブランケットと呼ばれるゴム製のローラーに一度転写(オフ)したインキを、再び用紙に転写(セット)することから「オフセット印刷」とも呼ばれます。

SDGsに貢献する水なし印刷とは?水あり印刷との違いやメリットを解説

水あり印刷と水なし印刷の違い

水あり印刷で使用する湿し水には、H液(バクテリアの好餌となる有機物質を含む)をはじめとする有害物質が含まれ、印刷時は常に大量の有害物質を使用していることになります。水なし印刷は湿し水を使わないため、有害物質を含む廃液が出ないのです。

とある比較試験では、水あり印刷の湿し水から下水廃水基準値(600mg/L)の約34倍ものBOD(※1)が検出され、COD(※2)も限定基準値をはるかに超えた数値が検出されたそうです。これに対して水なし印刷は、現像工程における現像液の使用量や廃棄量を大幅に削減。環境負荷が格段に少なく、地球にやさしい印刷技術であることが明らかになっています。

※1:BOD=Biochemical Oxygen Demand
水中の有機物が微生物によって一定時間内に酸化分解される時に必要な酸素量を表し、有機物による水の汚染度を表す目安として「生物化学的酸素要求量」と呼ばれています。
※2:COD=Chemical Oxygen Demand
水中の有機物が酸化剤で化学的に酸化分解される時に必要な酸素量を表し、有機物による水の汚染度を表す目安として「化学的酸素要求量」と呼ばれています。

SDGsに貢献する水なし印刷とは?水あり印刷との違いやメリットを解説

①版の違い

水なし印刷は、基本的な印刷方法は水あり印刷と変わらないため、大きなカテゴリーでいえばオフセット印刷の一種です。異なるのは、湿し水を使わないことと版の構造です。それでは、水なし印刷はどのように画線部と非画線部を区別しているのか、版の構造の違いを比較しながらご説明します。

従来の水あり印刷の版は、非画線部に湿し水を使用することで、インキの油と反発させて画線部と非画線部を区別していました。一方、水なし印刷の版は、非画線部がシリコンゴムの層になっています。このシリコンゴムが湿し水の役割を果たすことでインキを弾き、画線部と非画線部を区別します。

②現像方法の違い

水なし印刷と水あり印刷は、現像方法にも大きな違いがあります。水あり印刷の版は、現像時にPh12以上の強アルカリ性の現像廃液が発生するため、「特別管理産業廃棄物」としての回収が義務づけられています。しかし、水なし印刷の版は、湿し水を使用していないため現像工程で有害な廃液が一切出ず、現像処理後の排水は下水に流せます。そのため、水なし印刷は現像方法の観点からも環境にやさしい印刷方法であるといえるのです。

水なし印刷のメリット

ここまで水なし印刷の概要をお伝えしましたが、印刷企業が水なし印刷を取り入れることによるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。3つの大きなメリットを、次から詳しくご説明します。

①インキの水による乳化がなく、高精細でくっきりとした印刷物に仕上がる。
②刷版現像時に、水あり印刷では特別管理産業廃棄物として回収義務があるアルカリ現像廃液が発生する。しかし、水なし印刷は有害物質を含む湿し水が不要なため、廃液がほとんど発生しない。
③湿し水の管理が不要なため、印刷オペレーターはインキの管理に集中できる。品質管理が容易になり、生産性も向上する。

SDGsに貢献する水なし印刷とは?水あり印刷との違いやメリットを解説

①再現性の高い美しい仕上がりになる

水なし印刷は湿し水を使わないため、にじみに起因した「ドットゲイン変調」による色の変化を解消でき、印刷物の色が安定します。また、水によるインキの乳化が少ないため、水あり印刷よりも高精細でくっきりした印刷物に仕上がります。

②環境配慮のアピールが可能

環境配慮の観点からの水なし印刷のメリットは、湿し水を使わないことや、現像工程の薬品処理や水洗いによって発生する廃液を大幅に削減できることだけではありません。水質汚濁防止法などの遵守はもちろん、化学物質管理促進法、グリーン購入法、ISO14000シリーズの対策にも効果的です。

近年、多くの印刷会社がそれらの対策として水なし印刷を取り入れ、導入件数が年々増えています。また、世界的な取り組みであるSDGs(持続可能な開発目標)においても、水なし印刷を取り入れることで以下の8つの目標を達成できます。

・目標3:すべての人に健康と福祉を
・目標6:安全な水とトイレを世界中に
・目標8:働きがいも経済成長も
・目標9:産業と技術革新の基礎を作ろう
・目標12:つくる責任、つかう責任
・目標 13:気候変動に具体的な対策を
・目標14:海の豊かさを守ろう
・目標15:陸の豊かさを守ろう

世界的に環境問題が大きくクローズアップされている今、環境への配慮はもちろん、働き方や経済成長にも寄与する水なし印刷は、現代に最もふさわしい印刷方法であるといえます。

「SDGs」とは?

「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals):通称【SDGs / エスディージーズ】」とは、17のグローバル目標と169のターゲットから構成された、国連の開発目標のこと。先進国を含む国際社会全体が2030 年までに達成すべき環境・経済・社会についてのゴールで、2015 年9月に国連で採択されました。 同年 12 月に採択された地球温暖化対策のための「パリ協定」と両輪をなすもので、これからの世界を大きく変える道しるべとなっています。

③生産性向上やコスト削減につながることも

水なし印刷は、環境対応印刷ということで従来の水なし印刷と比べてコストが高いと思われがちですが、CCG HONANDOではほぼ同等の価格でご提供しています。水あり印刷は、インキだけではなく、湿し水の量や汚れ、温度などの影響が出るため管理に経験が必要です。水なし印刷は印刷が不安定になる要因である湿し水が不要なため、インキの管理に集中でき、品質管理の標準化が容易。さらに、準備時間の短縮とスピーディーな立ち上がりを実現することで、生産性向上にも貢献。損紙(試し刷りの用紙)も少なくできるため、コスト削減につながります。

④紙伸びが起こらない

水なし印刷は凹凸のある用紙に強く、平滑な用紙と同じように印刷することが可能です。用紙の種類によっては水を含むことで用紙そのものが伸びることもありますが、水なし印刷なら紙伸びが発生する心配がありません。紙伸びが発生すると、見当ズレの原因になります。水なし印刷は、美しい仕上がりの担保にも役立ちます。

水なし印刷のデメリット

水なし印刷では、仕上げる製品によってデメリットが生じることも。しかし印刷時に大切なのは、仕上げる製品に合った印刷方法を選ぶことです。水なし印刷には環境配慮以外の面で多くのメリットがあるので、検討時はCCG HONANDOにお気軽にお問い合わせください。

・水あり印刷と比べてインキが硬いため、紙が引っ張られてピッキング(紙むけ)のリスクがある。
・シリコンゴムとブランケットの摩擦により、静電気が発生しやすくなる。
・ゴースト(印刷面に濃淡が出ること)を解消するための対処法が限られている。

SDGsに貢献する水なし印刷とは?水あり印刷との違いやメリットを解説

水なし印刷に関するよくある質問

ここまで、水なし印刷の特徴やメリット・デメリットを解説しました。続いて、水なし印刷に関してよくあるご質問をまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。

SDGsに貢献する水なし印刷とは?水あり印刷との違いやメリットを解説

水なし印刷に適した用紙は?

水なし印刷は、凹凸のある用紙に強いといわれており、平滑な用紙と同じように印刷することができます。水でインキがにじまないため、一つひとつの点がくっきりと再現され、高精細で美しく仕上がります。

水なし印刷にはどのような印刷機を使用しますか?

現在使用している水あり印刷用の印刷機を、水なし仕様に転換することが可能です。水なし印刷では、印刷中の版面の温度を一定に保つためにインキローラーの冷却装置が必要になります。

水なし印刷にはどのようなインキを使用しますか?

水なし印刷では、シリコンゴムが湿し水の役割を果たすことでインキを弾きます。そのため、このシリコンゴムと反発しやすい性質をもった専用のインキを使用します。

CCG HONANDOでは環境負荷低減の取り組みとして水なし印刷を採用

CCG HONANDOでは、環境負荷低減への取り組みとして2019年8月に水なし印刷を導入。事業を継続していくうえで、「水も空気も汚さずに、少しでも環境のためにできることをしたい」という想いが大きな決め手です。水を使用しないため静電気などに細心の注意を払う必要がありますが、水あり印刷と遜色のない仕上がりに、お客様から高い評価を得ています。また、印刷オペレーターによる水の管理が不要になり、オペレーションが遥かに楽になっていることを実感。環境への配慮はもちろん、お客様や社員にもメリットのあることを今後も続けていきたいと考えています。

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